あなたのコトバが あなたをだます/日本語道場2020

「漢字假名まじり文」の日本語をkeywordに私たちの社会の深層をさぐります。

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5重表記の狂乱地獄

――日本語のRoma字表記への私案:前説            

和語5重表記の狂乱地獄   (新かな づかい)

 

◆和語オリジナル、 いわゆる ヤマトことば を表記するとき、

仮名文字では万全ではありません。 

現状、もつとも容易なのは、ROMA字でしょう。

キリル文字やハングル文字でも 不可能ではありませんが、

日本人一般になじみがうすい。

 

不幸なことに、

奈良時代に、先進国から文物を移入するその時代、

わが日本は、近隣には、「唐」という国しか 選択肢がありませんでした。

もしも、ローマ帝国が その隣りにひかえていたら、

一も二もなく、Roma字を採用していたでしょう。

 

残念ながら、呪術用の記号からつくりだされた漢字にとらわれた

「唐」という国にしかなかったのです。

その大陸にあって、出没をくりかえした王朝は、

現代の共産党政府に至るまで、漢字の呪いに からみつかれたまま、

時代に翻弄されてきました。

〇漢字の呪いに氣づいた共産党政権は、

文字の改革(簡体字化)とともに、

発音記号として、Latin文字から勘案した Pinyinを創出している。

〇かつての漢字文化圏にあった Vietnam と Korea も

戦後になって、さっさと漢字をすてた。

 

漢字の本家も、Roma字を導入しているにもかかわらず、

日本だけが一人、後生大事に

「漢字仮名まじり表記法」をまもりつづけている、

この律義さ、無定見。  往生際のわるさ。

 

おもえば、

遣唐使の遣いとして、大洋にくりだした青年たちの

その勇気ある所業をおもえば、

とりいれた漢字のアリガタサ。 もったいなさに、

仇やおろそかに あつかうべからず。

しかし、残念なことに、

当時の遣唐使が、いくら優秀な人材を擁していたとしても、

漢字の読み(発音)を とりいれることまでは できなかった。

 

古事記日本書紀萬葉集をみてもわかるとおり、

◆そのころの倭人は、

漢字の発音(よみ)を あらかた すてさり、

和語のオトにちかいコエで よみかえてしまったのである。

それゆへ、いまも和語における漢字のよみは、

きいても意味がわからず、もとの字が類推できない。

 

こういった状態が 千年以上もつづいてきております。

 

◇たとへば、

「観光」と「刊行」。

どちらも和式発音どおり、「かんこう」とカナでしるします。

しかしまた、

現行の日本では、[ kan-kou ]と発音されることは稀で、

「カンコー」と発音されるのが一般的である。

それはさておき、

観光と刊行であります。

まず、「観」と「刊」であるが、和語においては、

どちらも「kan」であるが、現中国においても、

2000年まえでも、発音はことなる。

おなじであっては、意味が通じない。

漢音にあっては、

「観」は 去声調で [ guan ]。

一方、「刊」は 平声調で [ kan ]である。

光は [平guang]。 行は [ 平xing] である。

まったく発音がちがう。

和語での漢字発音は、コトバの基本であるところの

コエ(発音)を完全に無視していて、テンとして はぢない。

これを、1000年以上もつづけて、

文科省からNHKまで、全国民がキクミミモタズのままである。

 

◆問題は、さらに深刻である。

日本語の文字表記の混乱が、

外国語習得にも不必要な障害をもたらしています。

 

この状態を、拙者は「和語5重表記の狂乱地獄」と称している。

 

○現行の、「漢字カナ交じり」表記。

音よみ・くんよみ、重箱よみ・湯桶よみ、

当て字ヨミ・判じヨミ、カタカナ英語、と

jargon よりもヒドイ奇形発音(ヨミ)が おこなわれている。

首相以下、日本国民の大多数が

漢字の識字率で、小学校levelである。

日本漢字能力検定協会のおこなう「漢字検定」の試験目的は、

ほとんど隠語化されている「よみ」の知識をためすtestでしかない。

AI が普及した直近未来では、

まっさきにおはらいバコ になるタグイの知識である。

公疫社団法人「日本漢字能力検定協会」は、さっさと

廃業なさるがヨロシイ。

 

○日本語文にもぐりこませた「片仮名」表記の外来語。

そして、

英語外来語のカタカナ表記である。

 

◇カナに準じた発音(よみ)、すなはち、

本家native speakerにも通じない発音を、

カナ文字で表記している。

ことに、LとR、Thの発音を表記することが かなわない。

 

以前にも 引用した

〽 レはレモンのレ~、  である。 ( ReはLemonのReぇ~)

今でも、 日本人がこれを歌っているのを見ると

ワタクシ、顔から火が 出そうになる。

 

◆中学生高校生が使用する大半の学習用英和辞典には、

カタカナの参考発音がついている。

本来ならば、 alphabet ( letter) をおそわる段階で

Phonics をならえばいいのに、文科省はやらず

辞書出版における「カナ文字表記」を禁じないでいる。

 

出版社も商売である。

万国音標記号のみの辞書は うれないので、出版されない。

こうして、

英語の教育現場では、カナよみ発音、カタカナ発音が

まず、キッチリとすりこまれる。

 

🔴一部カタカナ標記を原音にちかづけたカナ標記で 

近似の発音を提案する ヘンコツ英語猛者がいらっしゃる。

 

池谷裕二さんの『恐いくらい通じるカタカナ英語の法則』

講談社BLUEBACKS Y960 ] 2016.10初版

がそれです。

ワタクシの申し上げている

「和語5重表記の狂乱地獄」が、 まだ足りなくて、

さらにもう一つ、 ふやそうというコンタン。

各単語の発音を、独自のカタカナ表記であらわし、

そう発音することで、

Nativeの発音にちかづけようという提案です。

 

たとえば、

“I am getting off.” の ”アイ アム ゲッティング オフ。“を

“ アイムゲリンガフ ”

というふうによみかえるワケです。

 

これって、かなりシンドクありません?

なにしろ、何万とある 英作文のヨミの

その作文phraseごとに、 カタカナ発音の読み替えを 

恐ろしいくらい 沢山しなければならない、 なんて。

地獄が もう一つふえるだけだ というユエンです。

Phonics と Prosody を ちゃんとやればすむことでした。

 

以下、日本語のRoma字表記は、次回blogにて。