あなたのコトバが あなたをだます/日本語道場2020

「漢字假名まじり文」の日本語をkeywordに私たちの社会の深層をさぐります。

E89/自宅留学・英会話<毎日の生活空間に英語環境を取り入れるメニュー>

三週間のゴブサタでございます。

「日本人のザンネンな言語環境」として連載してきました当ブログ、
E/78でも言及したことをくり返します。

「日本人の9割りに英語はいらない」のですから、英語学習については従来の中学高校での程度で十分なのでした。そのことを承知の上で、現在の英語業界全般の基底問題、をあげつらつてみます。
まず、
☆英文法について
○「英語の基本だ」と言はれてゐる英文法については、専門家(学者)からのミスリードが未だにしてバツコしておりますので、注意しなければなりません。
現行の、日本の学校で行なはれてゐる英文法は、一世紀前のチャールズ・T・オニオンによる文法学説をもとにしてをり、今では世界中のどこでも採用していないシロモノです。20世紀初頭では最新の理論だつたので、日本の教育界が採用したのもうなずけます。しかし、これに今もなほしがみついてゐるのがガラパゴス日本だけなのでした。
海外の文物技術を移入するのに躍起となつてゐた明治期、
英語の文献を翻訳するのにこの英文法は役にたつたでせうが、
英会話能の習得にはむしろ障害になつてゐることを指摘する者は少ない。もし、それを指摘しても、守旧派(翻訳派)からは無視され、学習者の側も納得しません。
ということで、因循姑息、文部科学省をはじめ日本の英語教育界は、過去の反訳第一の悪弊から離れようとはしません。英会話関連の書籍の半分以上は、「英会話にも英文法は大事だ」としてゐるのです。
英会話教室に通うカモネギ様や音声教材を購入する人達も、学校英語の経験から、
「英語の意味を理解するには、日本語に訳せる能力がないとダメだ」とかたく信じてゐらつしやいます。「英語文の意味は日本語に訳さないとわからない。英語を英語のままイメージ理解しろ、なんてムチヤなこと言ふな」などと
これまた、鎖国アタマ丸出しの俗説を主張なさいます。
最大の問題点は、現状の英語教育を受けて、優秀な成績で海外留学する大学生の英語力が、
アジアの他の国からやつて来た学生の英語力に比べて、
本人がうなだれてしまふほど見劣りすることです。

☆英会話能の維持について
○在野の、英会話教室・英会話産業・出版業界などは、英会話能といふ「技能」を身につけたあとの能力維持について、常にノーコメントであります。
たとえ、TOEICや英検で高得点を取得したとしても、その能力を維持できなければだうにもならないのに、この点について何も言及せず、保証しないのであります。これつて、かなり変でせう?
実は、英語が必要のない9割りのミナサマには、たとえ1週間でも話せる実感を味わへれば、あとはだうでもいいのです。1年のホームステイ留学でペラペラの「ペ」ぐらいに喋れるやうになれば、本人は帰国して自信マンマン。半年でスツカリ忘れても、自己満足は残ります。
エビングハウス忘却曲線に思ひを馳せれば、習得した英会話能を維持するのに日々の練習が必要であるにも関わらず、このことに言及するる者が(私以外)一人もゐないのであります。
?あなたの持っている本に、達成した英語能を5年10年と維持する方法が書かれてありますか??

☆テストについて
○英語の検定テストがいろいろありますが、
どのテストも知識を測るもので、オーラル・コミュニケーション、英会話能を見極めるものではありません。ぶつちやけ、今のところ、英会話能についての実力テストはありません。
結局、英会話は、実際の生活の中で通じるか通じないか、の問題に収束するだけのハナシでした。

☆教室(講座)・音声教材について
○英語英会話の練習・学習書を著したり、英会話教室を運営したりしてをられるセンセイがたは、おおむね自分の経験をベースに、自分が習得した方法で練習するのがベストだと説いてをられます。
言語学教育心理学の基本的知見を知らずに、もっぱら自分の経験だけをより所に「論」を展開してをり、これが非科学的であります。
「賢者は歴史に学び、愚者は経験に学ぶ」の格言通り、自分の狭い経験の範囲で全体を論じてはいけないのであって、
誰がやっても一定の成果が得られる方法を提供しなければなりません。
「受講者○○万人突破」とか、「教材購入者○○万人!○年間売上げ一位!」などとうたう宣伝広告は、なんの保証にもなりませんが、一般人はスグだまされます。英会話産業が、霊感商法ソツクリな構造を温存して、はびこつてゐるのです。


?限定目的別「短時間集中記憶で英語力獲得……」と唱う○単塾。

?「 英語シャワーが危険な理由」のキャッチフレーズで勧誘するEQenglishのH講座。

?「聞きながすだけ…」のSラーニング。

?「続々英語ペラペラになっている教材」のLP教材。……などなど、
?たとえば、
高卒後、北米の大学に留学なさったSセンセは、最初の一年間は、チンプンカンプンだったそうです。他の日本人留学生と同じく、オニオン英文法で英文和訳・和文英訳を学習してきた弊害に気づかないまま、キャンパスで過ごしていたのです。十分な成果を得られないで帰国なさったのは、言うまでもありません。
高校生のときにアメリカのド田舎の高校に放り込まれた榊原英資オンタイとはエライ違ひです。

☆日本語の悲劇について
○日本語の表記は、現在のところ漢字仮名交じりであります。
この表記法が、外国語習得の根深い障害になっていることを指摘する者が絶無なのです。
ま、指摘したところで、改善策が提案できませぬが.......。

言語学の第一定理。コトバは音であること。
表意文字表音文字を併用する日本語表記では、オーラル・コミュニケーションの基本である「声」の普通の特性に気づくことがありません。
どんな学者でも、漢字単体を知つてゐても、初見の漢字語(熟語)を正しく発音できません。
正書法を持たない日本語世界では、日本語をカナ表示やローマ字表示で行なふことに本質的文化的な意味を見出しません。
反対に「読みにくい」だとか「日本の文化的奥深さを失ふ」などと、根拠のないヨタをとばします。

といふことで、
日本国内にゐて、英語の会話能を身につけるには、よほどのカクゴが要ります。
まず、
モチベーシヨンが そもそもないヒトは、とりもなおさず「英語が必要ないヒト」なのですから、
生活の合間合間にどんな学習(のマネゴト)をしても、身につく心配はありません。
勤め先の人事部から「TOEIC:800点をとれ」と命じられた社員は、必死になつて勉強して、850点をとれたとしても、
それはそれ、
英語でプレゼンができるワケでも、質疑応答ができるワケでもありません。

要するに、
英語の会話能を身につけやうとするなら、
榊原英資氏がやつたのと同レベルのことを、自ら課せば済むことではあります。それが、自宅留学といふモノなのです。
留学してゐるのと同じ環境を、自分の周りに作るだけなのです。
■自宅留学のメニユウ
○読み書きを、英語で。
新聞、TV、DVD、日記、雑誌、手帳、メモ、Eメール、スマホ(ケイタイ)の文字設定、
○DVDのドラマで聴き取り練習。
ディクテイション、シャドウイング
○読書。日本の小説家評論家の本でも、英語版があればそちらを。
ペーパーバックで、百万語快読に挑戦。
以上のやうなことを
最低限やれば、ほぼ一年で、そこそこの力がつきますが、
そのあとも、
ずつと継続してゐなければ、すぐに能力が落ちて来ます。
結局、英語での生活が好きでなければ、英語能は維持できないのでした。


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