あなたのコトバが あなたをだます/日本語道場2020

「漢字假名まじり文」の日本語をkeywordに私たちの社会の深層をさぐります。

日本の言語政策/悲喜劇。

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山本七平著「日本はなぜ敗れるのか?」から

日本の言語政策の敗因を論じるために、
底本として援用する、小松真一氏の「敗因21カ条」を整理しなければなりません。

「敗因21カ条」は、直接には帝國陸海軍の参謀本部・司令部の
組織的欠陥についてするどくきびしく論じたものであり、
明治維新以来の政府、軍部、教育界、学術界、産業界など、
小人数の村議会から、全国レベルの労働組合まで
およそ組織と名のつく日本人の集団社会において
危機に瀕した日本的組織を分析するのに、この「敗因21カ条」ほど 的確な分析器もありません。
的確に
天皇制や幕藩体制から日本軍まで続く日本型デモクラシーがもたらす負癖の文化体制〉の基盤があばかれてゐるのです。

ただしかし、以上の「敗因」の
そのままの文章を、日本語の文化状況と言語政策にあてはめることには無理があります。
軍事関連の用語表現があるので、これを
文教政策にかかはる組織や、在野の研究者、言論界や学者の用語に
おきかへなければなりません。
また、言語政策に関係のない文言と条項は省きます。

といふことで、
「漢字かな混じり」表記から脱却できなかつた(つまり、敗れた)
日本の言語政策の見地から、
21カ条を、いま一度、ここで検討してみます。

1、精兵主義の軍隊に精兵がいなかつた事。
然るに作戦その他で兵に要求されることは、
総て精兵でなければできない仕事ばかりだつた。武器も与へずに。
米国は物量に物言はせ、未訓練兵でもできる作戦をやつてきた。
◇「漢字かな混じり」表記は、日本語表記の精兵主義そのものを
具現してゐます。漢字を銃剣砲弾にたとへるならば、
これを完璧につかへるのが「漢字の精兵」でありませう。
しかるに、「漢字検定」なる半公的試験が、おおつぴらに
とりおこなはれてゐる日本で、毎年100点満点をとる者が
50パーセントも ゐない事。
「漢字かな混じり」表記に正書法がなく、基本読み以外の
例外読みがベラボーにおおいのでした。
言語コミニケーションに、和式漢字の読み書きは不要であるばかりか、
障害でもあるのです。
そこで、この条項は、以下のやうにかきかへます。

▶︎「1、『漢字かな混じり』の表記法に正書法がなかつた事。
然るに、読み書きで日本人に要求されることは、國語学者でなければ
できないことであつた。正書法も与へずに。
Roma 字表記法はその簡便さにおいて、10歳の子供でもできる事」

2、物量、物資、資源、総て米国に比べ問題にならなかつた
◇日本語における漢字の読みかたについては、
世界中の文字表記法とくらべてみても、異様です。ここの条項を以下のやうにかきかへます。
▶︎「2、文字数、読みかた、変則よみ、総て Roma 字表記に比べて問題にならない」

3、日本の不合理性、米国の合理性。
▶︎「3、「漢字かな混じり」表記法の不合理性、 Roma 字表記の合理性」

4、将兵の素質低下(精兵は満州支那事変と緒戦で大部分は死んでしまつた)
◇この項は不要なので、削除します。

5、精神的に弱かつた(一枚看板の大和魂も戦い不利となるとさつぱり威力なし)
▶︎「5、言語学的に無知だつた(一枚看板の漢語翻訳も、外語〔英語〕発話となるとさつぱり威力なし)」

6、日本の学問は実用化せず、米国の学問は実用化する
▶︎「6、翻訳式日本語英会話は実用化せず、ダイレクト•メソツドは実用化する」

7、基礎科学をしなかつた事
▶︎「基礎的言語学をしなかつた事」

8、電波兵器の劣等(物理学貧弱)
◇この項、7に準ずる。

9、克己心の欠如
「9、柔軟性の欠如」

10、反省力なき事
◇この項、9とほぼおなじ。

11、個人としての修養をしていない事
◇この項、削除。

12、陸海軍の不協力
▶︎「12、文部科学省、外務省、文化庁の不協力」

13、一人よがりで同情心が無い事
▶︎「一人よがりで普遍性をもたない事」

14、兵器の劣悪を自覚し、負け癖がついた事
▶︎「表記法の劣悪を自覚しながら、放置した事」

15、バーシー海峡の損害と、戦意喪失
▶︎「Fujitsu OASISワープロ・漢字入力ソフトの黙認と、改革忌避」

16、思想的に徹底したものがなかつた事
▶︎「言語学的に徹底したものがなかつた事」

17、国民が戦争に厭きていた
▶︎「國民が英語コンプレツクスになれてゐる」

18、日本文化の確立なき為
◇この項、そのまま採用。
▶︎「日本文化の確立なき為」

19、日本は人命を粗末にし、米国は大切にした
▶︎「『漢字かな混じり』はコエを粗末にし、Roma 字表記は大切にする」

20、日本文化に普遍性なき為
◇この項そのまま。
▶︎「日本文化に普遍性なき為」
21、指導者に生物学的常識がなかつた事
▶︎「指導者に言語学的常識がない事」

以上です。
これら箇条を、いま一度 列挙してみます。(カツコ内数字は、もとの条項番号)

1、『漢字かな混じり』の表記法に正書法がなかつた事。
然るに、読み書きで日本人に要求されることは、國語学者でなければできないことであつた。正書法も与へずに。
Roma 字表記法はその簡便さにおいて、10歳の子供でもできる事
2、文字数、読みかた、変則よみ、総て Roma 字表記に比べて問題にならない」
3、「漢字かな混じり」表記法の不合理性、 Roma 字表記の合理性
4(5)、言語学的に無知だつた(一枚看板の漢語翻訳も、外語〔英語〕発話となるとさつぱり威力なし)
5(6)、翻訳式日本語英会話は実用化せず、ダイレクト•メソツドは実用化する
6(7)、基礎的言語学をしなかつた事
7(9)、柔軟性の欠如
8(12)、文部科学省、外務省、文化庁の不協力
9(13)、一人よがりで普遍性をもたない事
10(14)、表記法の劣悪を自覚しながら、放置した事
11(15)、Fujitsu OASISワープロ・漢字入力ソフトの黙認と、改革忌避
12(16)、言語学的に徹底したものがなかつた事
13(17)、國民が英語コンプレツクスになれてゐる
14(18)、日本文化の確立なき為
15(19)、日本文化に普遍性なき為
16(21)、指導者に言語学的常識がない事

この項つづく......