あなたのコトバが あなたをだます/日本語道場2020

「漢字假名まじり文」の日本語をkeywordに私たちの社会の深層をさぐります。

E103/ 日本の首相の演説

イメージ 1


一部で 批判がまきおこつてゐます、安倍総理の米議会演説(4/29)
とりあへずは、スタオベ10回にもおよぶ 感動の演説でしたね。
歴史に残る名演説と 語りつがれるかもしれませんが
ひとつ、残念なことがありました。

特別のスピーチ・ライター をやとつたのかしれませんので、
演説の文内容は、本当に素晴らしい。しかし、
その読み上げ方が残念でした。

読み上げる発音は仕方ありません。
首相自身、演説の中でのべているやうに、
アメリカ生活が短かくて、己の英語発音を
米語の発音に近づけることができなかつたのですから、発音のレベルは、
平均的日本人にくらべれば、ヨシとしなければなりません。
おそらく、大学への一年留学でも、会社在職中のアメリカ出向のあいだも
英和辞典を抱きしめながらの滞在だつたのでせう。
今さら、どうしやうもありません。
声量は充分でした。

発音は仕方ありませんが、もつと大きな問題は、
読み上げ方です。
私は、生中継では見られずに、後から録画の画像を見たのですが、
総理は、日本のテレビ・ラヂヲのアナウンサーよろしく、
大きな font で印字された演説原稿をゆつくりと
しかし、元氣イツパイ読み上げてゐらつしやいました。
一字一句まちがはないやうにと、幾分緊張なさつてゐるのが感じとれます。
しかし、その 區切り方が 細かすぎました。

演説最後のクダリをみてみませう。
Distinguished representatives of citizens of the united states,
Let us call the U.S. - Japan alliance, an alliance of hope.
Let the two of us, America and Japan, join our hands together
and do our best to make the world a bettre, a much better place to live,
alliance of hope...together.
We can make a difference.
Thank you, so much.

総理は、以上の文を以下のやうに、ブツギリに読み上げてゐました。
Distinguished
representatives
of the citizens
of the united
states,
Let us call
the U.S. - Japan
alliance,
an
alliance
of hope.
Let the two of us,
America
and Japan,
join
our hands
together
and do
our best
to make the world
a better,
a much better
place to live,
alliance of hope...
together.
We can make a difference,.
Thank you,
so
much.

短いphrase をすらつと発するところもありましたが、
to や the など 会話では ほとんど聞きとれないぐらい弱く発音する語まで、
念を押すやうに、ゆつくりと 強く発音なさつてゐました。
これでは、アメリカ議会のみならず どこに行つても、聴いてもらへません。
案の定、議員席に座つてゐた 上下両院議員の皆さんは、
事前に配布された 演説原稿のコピーに目を落としてゐらつしやる。
演説してゐる安倍総理の方にほとんど目を向けません。
原稿のコピーを見ないと、安倍総理が何をいつてゐるのか、
カイモクわからないのです。
それほど間延びして、尋常ならざる発表会だつたのです。

たとへば
インドの首相が ナマリの強い発音ながら
英語で演説するとしても、
安倍総理の原稿を2分の一ほどの時間で
読み上げてしまふでせう。
つまり、世紀の名演説が、コピー原稿で読まれるといふ、
日本の英語教育の結実を、モノノミゴトにあらはした
歴史的なパーフオマンスだつたのです。
これはまた、日本とアメリカの一方通行的政治関係を はしなくも
象徴してゐるデキゴトでもありました。

ま、かういうことは、別段 おほきな問題ではないかもしれません。
要するに、
クリミヤ半島問題と中国のAIIBがアメリカを追いつめてゐる時期に
日本の総理が、アメリカ議会で
アメリカよいしよの歴史的演説をおこなつた
といふことの方が、きわめて重大な意味をもつのですから。