あなたのコトバが あなたをだます/日本語道場2020

「漢字假名まじり文」の日本語をkeywordに私たちの社会の深層をさぐります。

E32/英語で考える。

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Now, let's begin the critical reading on the book titled "Eikaiwa no Shotai" by Dai Yamamoto.
First of all, take a look into the contents.
『英会話の正体』では、
全体が40章に分けられ、各章ごとに一つのテーマが取り上げられ、英会話にまつわる日本人のさまざまな問題点を、強烈な言い回しモノいいであげつらっています。1章の「英会話の正体」から40章の「断続の継続」まで、おもしろいタイトルがメジロおしです。
contentsの前には、はじめに、とあって、
「英会話の化けの皮を剥いだら、こうなるという正体を暴いたのがこの本です。」
と、いささかゲンナリしたくなるハイ・テンションで始まりますが、
実は、このテンションが、巻末まで続くのです。
また、この「はじめに」の前ページには、3行の惹句スローガンが縦書きで表示されてます。曰く、

* あなたは、英会話を本気でやる気がありますか?
* ほんとうに英語を話せるようになりたいですか?
* そのための真に効果的な方法を熟知していますか?

と、たたみこんでこられます。
執筆の動機としての、高潔な意気込みがうかがわれ、誠に厳粛な気持ちになり、
この御本は、世にあまたある英会話習得法の執筆者達の、心胆を寒からしめるであろう、と
大いに期待したものです。
が、しかし、この御本は、ベスト・セラーのランキングにもエントリーされず、英語関連の書物雑誌でも大々的に取り上げられるコトもなく、時がむなしく打ち過ぎました。
ま、それは良いとして、本題にはいりましょう。
まず、その第一章から見てまいります。

冒頭、日本人の多くが、英会話教室でやっているコトは、英会話ではなく、英聞話(エイキクワ)だと指摘なさいます。
これは、まあ、言われてみればそうに違いありません。小生も賛成します。
が、その次のページからがイケません。
「......実力のつかない方法論が英会話教育の世界では横行しています。」として、
方法論項目を列挙し、ツッコミを入れておられます。

● 英語で考えろ!(Think in English)
(どうすればそんなことができるの!?)
スクリプト(テキスト)を見ないでテープを聞け!(じゃ、いつ見るの?)
● 聴けない英語は話せない。(聴ければ英語を話せるの?)
● 聞いているだけで話せるようになる。(そんなヒトいません!)
● 英会話に文法は不要!(それではちょっと複雑なことになると言えないし! わからない!)
● 間違いを恐れずにどんどん話せ!(恐れちゃいないが言えないものは言えない!)
● 子供は耳から言葉を覚えたのだ!(字が読める大人の学習法とは異なって当然です!)
● 習うより慣れろ!(具体的にどうすれば何に慣れるのか?)
FEN(現AFN)をBGM代わりにいつも聴き流せ。(わからないものを聴いているうちにわかるようになる道理はありません! それは幻想です!)
以上、9件のツッコミ!
如何でしょうか?
小生側から逆ツッコミを入れたくなったのが、9件ありました。つまり全部でした。
この筆者、山本大センセは、
練習法や、言語習得の前提について奇妙なカンチガイをなさっておられます。
それぞれの、項目のスローガン文を、どの書物の、どのページから読みとったのか?具体的に示されないと、批判になりません。
議論のとっかかりですから、そこのところを、巷間言われているが如くに挙げつらっては、
自分の仮説立論を優位に保つための、見え透いた策術と言われても仕方ないでしょう。
さも、正論のようなツッコミを入れても、各文の前後のコンテキストがすっかり削除されていては、正確な議論はできません。
実は、これら9項目のツッコミは、このあとの各章に出てくる議論の前振りだったのです。
14章に、「英語で考えろ」の嘘!
22章に、「英会話に文法は必要ない?」と出てまいります。
それでは、次回は、第2章へ!