あなたのコトバが あなたをだます/日本語道場2020

「漢字假名まじり文」の日本語をkeywordに私たちの社会の深層をさぐります。

E38/ 日本人のザンネンな言語環境:連載

○ワタクシが山本大センセのゴ本にこまかくかみついておりますのは、ワタクシが、有効かつ効果的とおもう方法と、センセの御説とがかなりちがっているからです。ことにセンセの方法論の前提となっております、文法・翻訳・言語習得のメカニズム・日本語などについて、見解の相違がかなりございます。ま逆、なんて場合もあります。

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いくつかあげますと、
*学習法に至る前の、成人の記憶力(記憶のメカニズム)についての考慮がみられません。ひたすら記憶(暗記)せよのイッテンバリのようにお見受けいたします。
*地球上唯一!臨界期に固定される音感の、日本(語)の特殊事情と、
純粋感覚を妨げる母語干渉についての考慮が欠落しています。
田中克彦氏の指摘を無視するワケにはゆきません「日本では漢字で考えるので、日本文化全体がオトに対しては回復不能なくらいに力を失ってしまっている。外国語が身につかないのも、いわば当然のこと」『言語学とは何か』岩波新書ーーーこの点を、すべての日本人がひきうけざるを得ない枷として自覚しておく必要があります。山本大センセは、この点についてのスタンスが不明なのです。
他方、
◎日常生活での維持メンテナンスは、「壁打ち、素振りの練習をせよ!」と、
一章を割いておられますので、この点は納得できるのですが、首をかしげるざるを得ない章の方が圧倒的に多いのでございます。
今後に言及するでありましょう点をこの際、列挙しておきますと、
山本センセは、

*外国語の意味を母語に翻訳すれば、意味がわかると、誤解なさっています。
⇒「意味」とは何か?

*個々の単語が有するイメージ(母語話者の言う「意味」)の記憶は、音楽や絵の記憶と同じなのに、そうとは氣づいていらっしゃらない。
⇒言語とは何か?

*日本の英語の文法が(日本の他の学者・専門家・文部行政当局と同様)100年前の旧い理論によっていることを、ご存じない。文法というものが流動的かつ便宜的な学問であることを了解なさっていない。さらに、学習している当該外国語の文法を母語(日本語)で説明できるとする誤解。
⇒「文法」とは何か?

ま、これくらいにしておきましょう。本題にもどります。
『英会話の正体』
9章「センテンスの区切りの意識」では、長いセンテンスでも、「ネイティブは一気ヨミする」とおっしゃいます。
まあ、そういう場合もタマ~にありますが、ワタクシの見る実際の状況をハナシますね、

◯山本大センセは、英米のテレビ・ラジオを聴くことはないみたいですね。(このゴ本の初版は2007年なんですが、センセはケーブルテレビもパソコンものぞいたことがないようで……)
ワタクシ、山本センセよりはめぐまれておりまして、
DVDをはじめとして、外国語の音声画像情報にふれる機会がおおございました。
テレビドラマでも、ニュース番組でも、人のしゃべる文は、一気ヨミするようなリュウチョーなカツゼツではありません。
ナマ放送では、アナウンサーはもとよりインタビューをうける一般人や専門家も、マイクをむけられている間、言いよどんだり言いなおしたり、考えこんだり、イロイロです。セリフをバッチリしこんだ役者ではないのですから、一つの文章を一気呵成によどみなくよめたところで、普段の会話でそれが永久につづけられるワケでもありません。
◯英語で大事なのは、「センテンスの区切り」ではなく、単語上のストレス(強弱)と文節の流れの中でのイントネーション(抑揚)でありましょう。
センテンスを句や節で休まないで、7~15ワードほどの文を一気に棒ヨミしても、ネイティブには通じるワケがありません。日本人はけっこうやりそうですが。
一つの文で、アクセントをおく場所によって、伝えたい意味・強調点が変わります。また変えるべきであります。 これをニュアンス表現と申します。
山本センセは、大事なポイントをムリヤリはずして、奇妙な部分をさも大事なコトのように指摘なさって、しかもそれがセンセ独自の発見のように強調なさって、あげくにドツボにはまる、というパターンがメジロオシのようにおみうけいたします。今後も、そのように推移してまいろうかと存じます。

以上、9章のモンダイ点を、かるく整理してみました。