あなたのコトバが あなたをだます/日本語道場2020

「漢字假名まじり文」の日本語をkeywordに私たちの社会の深層をさぐります。

E42/ 英会話!日本人のザンネンな言語環境:連載

イメージ 1

つづいて、13章、
「学校英語では英会話ができない本当の理由」です。
この章は、めずらしくワタクシの意見と表面上は符合する点がありますので、次の章との落差を思うとき、なんでこうなるの~ッ!! と、納得ゆかない氣モチになります。(ホントは、分かってるんですけどね)
いわく、
①「学校英語は英語から日本語への一方通行だということです!」
②「その逆の和文英訳は皆無と言っていいほど行なわれて来ませんでした。」
③「英会話力を向上させるためには、個人の学習・練習を通して、使える表現・センテンスを増やす、という訓練を自分でしなければなりません。」
3番目のスローガンなんぞは、一字一句そのまま、ワタクシが日々申しあげている文句と寸分の差もありません。
そして、
・小学校で行なわれている「英語と親しむ」教育について反対だ。
とおっしゃる山本センセには、ここでも賛意を送ります。
センセのおっしゃる「国家的損失」かどうかにはチョイ別の意見がありますが、
この章で言われたことについては、根本原因についてのとらえかたは別にして、おおむね同意しておきます。
モンダイは、次とその次の章です。

14「『英語で考えろ』の嘘!」と
15「『必要は発明の母』の嘘!」

ワタクシが山本大センセの「英会話の正体」をわざわざ取り上げて、オチョクリック連載をはじめましたのも、これらの章にひっかかったからであります。
「英会話の正体」は、相対に誤解と偏見にみちたトンデモ本の一種なのですが「出版界マスコミで批評された」と聞いた試しがありません。初版が出て、すでに5年をこえており、ネットでも販売されているようです。
つまり、世の中でそれなりの立ち位置が定まったのかな~?というのが、今のトコロの印象ではあります。(この点、 ロングセラーになっているドリアン助川こと明川哲也の「オバケの英語」とは真逆のインパクトを持ちつづけているのが、なんともフシギな日本ではあります。)

どこがモンダイなのか?
英会話能を目指すモノのみならず、コトバを学び、専門職とするモノなら、
「言語とは何か」について、一通りの基礎知識はもっているハズにもかかわらず、山本センセはほとんどトンヂャクなし、なのであります。イチオ~普通の大学を卒業なさっていらっしゃるのに、(日本の英語難民ザンネン族の方々同様に)トンデモない説をのたまっていらっしゃいます。
文法、音韻学、意味論、脳科学など最新の知見を調べるのに、大部な専門書を読む必要はありません。多くの入門啓蒙書(新書版にして200ページ前後の軽い本)をチラとのぞけばよろしいのに、そんなコトすらなさった形跡が見受けられないのです。
ワタクシが、このゴ本がトンデモ本の一種だという、その証拠のクダリがここにみえるのであります。
では、そこのトコロをしっかりみてまいりましょう。
まず、
「『英語で考えろ』の嘘!」から、
まだ英語でリューチョーに話せなかった頃の山本修行者、ネイティブのインストラクターに
「Think in English.」と言われてしまい、カチンときたそうです。
「英語で考えられるくらいなら、こんな教室になんか来るワケね~だろ!」というワケです。
イチオ~御無理ゴモットモ。普通の日本オジンなら、そう考えますわな~。そして、和訳された文を読んで、その深淵なる意味を知り、日本語の微妙なるニュアンスの文を英訳するために、英文法をしっかり活用した英作文を、カタカナ発音ベタベタで、発するのであります。
これを「左脳内逐語反訳発話」ともうします。
反訳です。反の訳。訳に反する文、ホンヤク文。
しかし、山本センセはゴゾンジない。
バイリンガル並の脳では、英語と日本語の処理領域がはっきりと分かれていること。英語に不慣れな日本人青年は、日本語脳の領域で英語を処理しようとしていること。
◯相手の英語を完全に聞き取れたとして、それを完全に和訳したのち、発話すべき日本語文を作り上げ、英語に反訳していっても、会話のスピードにはついて行けないこと。このやり方では国際会議での同時通訳以上の即断即決のホンヤク能が必要なのだが、そんなコトができる超人はこの地球上にはいないこと。
つまり、アタマの中で、英文和訳和文英訳をくりかえしおこなっているザンネン族の方々は、普通のスピードの会話について行けないのでした。

山本センセは、どんなアタマをなさっているのでしょうか? かなり超人的なホンヤク操作を脳内でメマグルしくやっておられるのでしょう。自称行者の、まさに超人です。
これこそ、山本センセの「英会話の正体」であります。
「Think in English」が不可能なら「Think in Japanese」でいくしかないでしょう。
それで、英語がしゃべれるのでしょうか? 和文英訳はできますが、適切な訳語が思い浮かばなければ、ムングリ黙るしかありません。5歳のネイティブの子供は、600や700のボキャブラリーで会話を成立させます。言語運用の能力には個人差がありますが、いずれにせよ、言い換え代用語をもって、意味に近づけようとします。イメージ優先ですから、、、
日本人は、その言語運用能力がかなり乏しいのです。持ち前のボキャブラリーを活用できないのです。その原因には、世界唯一の「漢字カナ混じり」という、日本語独特の表記法があるからでもあります。
○文字の読めない子どもが、母語を習得する過程をみれば分かることなのですが、英語に限らず、外国語を習得するには、まず、聞く話すが基本でなければなりません。でなければ、ジョン万次郎がアメリカで英語の会話能のみならず読み書きまでマスターできた所以がわからないでしょう。
榊原英資さんが、アメリカのド田舎の高校で習得した方法も必須です、
英和辞典を捨てて英々辞典で意味を調べる。その効果が、日本の文部科学省も山本センセも、逐語ホンヤク優先のため、理解不能でありましょう。
Think in English.とは、
日本語を介さず、ナマのままダイレクトにEnglishを受け入れることだったのです。