あなたのコトバが あなたをだます/日本語道場2020

「漢字假名まじり文」の日本語をkeywordに私たちの社会の深層をさぐります。

E51/英会話:日本人のザンネンな言語環境:連載

つづきまして、
第21章「慣れのウソ」であります。
ここでは、 Master Yamamoto 大センセの学生時代の Episode から、
How come こんなネジクレた御本を書かれてしまわれたかの、遠いイキサツが示されております。

In his freshman year 大学1年生のとき、英語の教授が
FEN(米軍極東放送・現AFN)を毎日BGM代わりに聴いて、話せるようになった」とおっしゃったところ、即座に疑問をもったといいます。
「そんなことやって、ほんとに英語がうまくなるのかよ••••••?」
例によって、センセ独自のカッテな思い込みですが。
こうして、その練習法にマイナス・イメージをシッカリ刷り込み、
教授の追い打ち自慢話しに挑戦することになります。
すなわち、
英語の劇映画を「一日、四回の上映を全て見て、耳を鍛える」というものでした。

○ヤマモト青年は、
「西部劇でスティーブ・マックイーン主演の「拳銃無宿」かなにか」を劇場に弁当を持ち込んで、見るのでした。
スティーブ・マックイーン主演の「拳銃無宿」は1950年代後半のアメリカのTV映画で。 人気があったものの、劇場版は製作されなかった映画です。実際のところヤマモト青年は、どんな西部劇映画をご覧になったのでしょうか???
ま、しかし、
劇場では、英語のセリフの聞き取りは芳しくなく、4回目の途中で打ち切ったそうです。
この経験から、ヤマモト青年は、
「慣れてくれば、そのうち聞こえるようになるし、話すのも上達する」という、
どこで聞きカジッタかはわからない「キャッチフレーズ」に、大いなる疑念を抱くようになったそうです。
○ま、ナイーブといえばナイーブ。オッチョコチョイといえばオッチョコチョイ。
こんなショウモナイ経験を根拠に、「英会話の正体」をでっち上げられてはたまりません。
ヤマモト青年のたった一度のつまづきに、自分のやったことへの客観的反省や考察吟味もなく、ただただ(学生をバカにしたよな)皮肉っぽい教授のすすめる方法を全否定してしまいました。(こまかい具体的な説明をしなかった教授の方もいささか問題アリですが。)
だいたい、「慣れてくれば、そのうち聞こえるようになる」ソノウチって、どのクライのナラシ練習の分量を言っているのか、ゼンゼン具体的ではありません。
ヤマモト青年が大学生だったころ、英語の授業で「フォニックス」の課程があるワケでなし、
中高大・全国一律、カタカナ発音の訳読が常識だったのですから、その時点で、
映画やラジオでリスニングにいどんでも、聞きとれるハズもなし。
チャレンジ精神は買いますが、失敗をした原因を追究せず、まっとうな方法論にナンクセをつけられても非生産的。
手段方法を実地にとりおこなうにあたって、目的を達せられような準備と基礎力が、チャレンジするガワに求められたのです。

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○「英会話の正体」の初版は、2007年ですが、それより5年前に、
ディビッド・A・セイン著「英語 確実に聴きとる技術」
と言う新書本が出ております。(KAWADE 夢新書)

その本の第一章「なぜ、あなたは聴きとれないのか」で、
13の小見出しにわけられた中に以下のように、
日本人のリスニング力を阻害する要因が列挙されています。

📎"ローマ字読み"の発音を聴きたがる
📎単語の"発音の変化"に鈍感
📎話題の基礎知識に欠けている
📎単語や文法の勉強につい燃えてしまう
📎英語に触れる時間が足りない
📎あきらめが早い
以上の事例を見るだけでも、
大学一年生のヤマモト青年のおかれた「英語とゴ自分の状況」が手にとるようにわかります。
ハリウッド製の西部劇映画を見にゆくまえに、
ヤマモト君は、セイン先生に教えをこうべきでしたが、時代がずれておりますユエどうしようもありませんでした。
しかし、「英会話の正体」を執筆するまえには、セイン先生の御本は読めたハズです。お調べにならなかったのでしょう。ザンネンでした。

○結局、 Master Yamamoto 大センセの結論は、
「習うより慣れろ」の元句、
" Practice makes perfect."
の「Practice 練習!」にゆきつくのでした。
この章の後半、申し訳のように、センセは
後日、卒業まで FEN を毎日聞き流したと、書いておられますが、
2章で、受け身の「英聞話」だけでは上達しないというのを証明するように、
「聞いているダケ」ではダメでした。
○元上智大学学長のクラーク教授のおっしゃるように、放送番組を録音し、何度も繰り返し再生してディクテイションしながら、
全スペルを正しく書き出した上で、意味の通じる文章にまとめなければなりません。そうやって、はじめて放送の中でしゃべっている英語の内容を聞き取れるリスニング能ができるのです。
放送を聞き流しただけでは、ダメなのは、当たり前でした。
シャドウイングすらしてませんから、、、
ただ、ヤマモト青年、
米軍放送の中でも、VOA(ヴォイス・オヴ・アメリカ)のような、英語学習者ムケの番組を聞けばヨカッタでしょうに。。。コレマタ ザンネンです。

○ この章の後部には、例によって、 Master Yamamoto センセ御手製の練習用例文が掲示されております。今回は、10本。
そのうちから、あなたもメッタに使わないであろう例文を一つ、
" She had a famous designer make her wedding dress."
--- She を I に、her を my に入れ替えたら、なおさら使いようもありません。
こういう練習が、センセ御得意なんですよね。
○この章の料理はこれにて終了。次の章にまいりましょう。

第22章は「英会話に文法は必要ない?」です。

○モチロン、必要ありません。
しかし、翻訳家のヤマモトセンセには、仕事柄必要なので「英会話の正体」では、文法が重要であると主張なさいます。
章の冒頭で、
" Nothing is more ridiculous than that."
と書いておられます。

他方、
☆「なぜ私たちは3カ月で英語が話せるようになったのか」の本城武則アニキや、
☆メルマガ「EVERYDAY ENGLISH PHRASES」の YOSHI さんも、
同じく
☆「六単塾」の祐樹せつら 塾長も、文法は、不要、むしろ邪魔であるとおっしゃってます。

★本城武則 http://www.eqenglish.jp
★YOSHI info@native-phrase.com
★六単塾 mail@mailkouza.com

また、上記3センセイの御ケーケンに基づく実践法を採用できない日本の英語事情であればこそ、
中学高校大学と、文法中心のホンヤク学習に特化せざるを得ない日本の学習指導要領では、例文マル暗記の Master Yamamoto 方式がセキノヤマでしょう。
イキオイ、ヤマモトセンセは「複文重文は大人の会話ではよく使う」と主張なさって、
文法の必要性を強調なさいます。
それは、英文和訳和文英訳のときに必要なのです。会話ではありません。
○そして、この御本は「英会話の正体」であります。
マコトに虚しい argument でありますが、如何せん、
90%の日本人にはEIGOは必要ありませんので、
ザンネン族のミナサマが、好きなようにしておれば、never 身につきませんから安心です。
「英会話の正体」のセンセの御高説が根本的に疑われるような事態は惹起いたしません。
メデタシめでたし。