あなたのコトバが あなたをだます/日本語道場2020

「漢字假名まじり文」の日本語をkeywordに私たちの社会の深層をさぐります。

E55/ 日本人のザンネンな言語環境:連載

『なんで英語やるの?』(文春文庫 )で、
中津燎子氏が強調なさってますように、
日本人の英語の発音は、世界最悪です。
この日本人のザンネンな耳とクチに「発音トレーニングをつけてやろう」と
何人ものネイティブ(ヴォイス)トレーナーが勇躍来日しますが、
半年もせぬうちに、深い絶望におちいります。
中津先生のおっしゃるとおり、
日本人はかたくなにカタカナ発音にしがみついているように見えます。
聴くミミをもたないのか、唇・舌・声帯に日本人特有の遺伝的障害があるのか、
とんと見当がつきません。(現実には、もう判明していますが、)
で、根気よく指導する努力を、トレーナーは早々にあきらめます。
世界最悪だと判じざるを得ないので。
TOEICや英検に挑戦している日本人は、これを聴いて、
「最悪なんて!? んなことはナイだろ!
アジアの他の人間だってヒドイ訛りで発音しているじゃん!」
と言うでしょうが、ザンネンながら、その抗議は受けつけてもらえません。
インド人も中国人もそれぞれの母語に影響された独自の訛りで英語をしゃべりますが、そのナマる範囲の中で、R・Lの區別はちゃんとできているのです。
ほとんどの日本人は、この全く声質の違うRとLの発音を、カタカナの「ラ行」発音と混同して、同じように発音してしまいます。
とにかく日本人は、
"R". "L". "Th"." F"の子音やa系の母音で構成される単語、成句、センテンス、どのレベルにおいても、通じるように発音出来ません。
日本人だけがです。
それで、内田樹先生は、英語をリンガ・フランカとして容認する条件として
「日本人の英語発音だけはカンニンして~」と言っているのです。

○さて、本題にもどって、
『英会話の正体』の山本センセは、この日本人の発音についてはまったく触れようとなさいません。テッテーして長文の口頭練習、地獄の特訓だけです。

23章の次は、24章。
「『とっさに英語が出ないんだよね』とよく言うが・・・」
であります。
センセの結論部分を書き取りますと、
>「結論として「とっさに出ない」のではなくて、知らないんです!」
と叫ばれておられます。
ま、現状、日本のザンネン族はそんなトコでしょう。ですので、センセも、いろんな表現を学んで覚えろとおっしゃってます。
でも、一番カンジンの、発音についてはナニもおっしゃいません。和文英訳では、発音は必要ありませんから・・・。

○ツギ! 25章!
「英語国に住むことが最良の方法?」
ここでも、山本センセは、現象の一面をとらえ、
自分だけの解釈に沿って、後の論説を展開なさいます。
>(p.133)
英語圏に住めば毎日、四六時中英語に触れるので、時間が経てば自然にうまくなると誰でも考えそうですが、残念ながらそうではないのです。ほんとうにうまくなった人は日本を発つ前から、基礎をしっかりと学んでいた人です。」
この2センテンスの、あとの文章がいけません。
英語圏に長期滞在なり永住なりして、英語を使いこなせるようになるにも、
個人差があります。現地に入ってから、英語の練習をどう自分で工夫するか、
ヒトによりけりなのが、山本センセには想像すらできないのです。
全ての日本人が、「高卒後ハワイに30年、ガイドをしてきたオバサン(前出23章)」と同じだと決めつけないことです。留学永住前から基礎的要件を全て習得していたワケではありません。

○更に、ザンネンなイイグサが、
この章の結論として、最後のパラグラフにでてまいります。
>(p.134)
「英語の環境自体がその人の英語力の上昇を助けることはありません! 必要ならうまくなる、という考えは現実とはかけ離れているということです。」

ここでも、前の文章は半分正解です。しかし、後の文章はマチガイです。
山本センセは、この「必要」というコトバにえらくコダワリをお持ちですが、その意味概念が、やたらと現実ばなれしてますネ。
○英語に限らず、
人が技術・能力を習得しよう高めようと望むとき、
必要以上のことを目標にすることはマズありません。必要最低限の努力と最大限の効率を求めるモノです。
ヒトがそれを「必要」というときには、ヒトそれぞれの必要性に切実度の差があります。
成毛眞シャチョーの本『日本人の9割りに英語はいらない』で言われるように、
英語の必要でもない者は、ついぞヤル氣がありませんから、
ガンバッテいるツモリでも成果にむすびつく「ガンバリ」にならないのです。
TOEIC800を課されたUNQOLOの社員は、実務の現場を離れてから英語の勉強をしますが、一向に英語能が伸びません。
こういった「9割りの日本人」に英語は必要ないにもかかわらず、
山本センセは
「それ以上のものを得るために、文法、長文読解を必死にモノにせよ!」とおっしゃる。そんなレベルを求めるモノが、この日本に何人いるか?
一人はいるでしょう。
山本センセそのヒトです。

○26章「子供は言葉を自然に覚えた?」
ここでは、山本センセの珍妙この上ないハナシが縷々述べられていますが、
まともにつきあってますと、アタマが腸捻転になりますので、パスします。
神経科学はともかく、
こどもの母語習得にかかわる、教育心理学言語学など、
科学的知見を無視したヨタ話しを読むのは、
かなり痛々しい。
このセンセ、ホンマに大学でたんかいな~? と思ってしまいます。

以上24章から26章まで、端折ってヤッツケました。
これからは、このペースでまいりたいと存じます。