あなたのコトバが あなたをだます/日本語道場2020

「漢字假名まじり文」の日本語をkeywordに私たちの社会の深層をさぐります。

E110/英会話能の訓練

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先のブログでは、
英文の記事のあとに、日本語訳を付記しておきました。
それは、
日本人が英文を読んでも、
日本語に訳して読んでるゐるクセを
再確認するためでした。
普通の日本人は、
英文と翻訳文が並記されてますと、
日本語文の方をよんで、意味をしらうとします。
わかりやすいのです。

英会話で相手の英語発話を 日本語に訳すのは
アリ地獄のワナであります。
英会話の教室で、和文英訳はともかく、
英文和訳で意味をわからうとしてゐたら、
それは同時通訳の技能の訓練だとおもつてください。
そこでは、英会話能は身につきません。


外国語習得の正当な方法手順は、
ダイレクト・メソッドでしかありえません。
最初に、音声による communication の感覚訓練から
はじめなければ、簡単迅速な習得はムリであります。

しかし、ガラパゴス日本では、
ながいあひだ、このことに氣がつかない風を
よそおつてきてをります。

日本国内では、英会話能の習得法についても
また、
外国語文献の読解や 和文からの外語への翻訳についても、
学習の基本が、
文法理解と語彙の意味記憶におかれてゐます。

市販されてゐる、英語関連の書籍の大半が
英文和訳の方法論を base にしてゐますから、
いつまでたつても、「英会話ベタの日本人」から
脱却できないのであります。
唯一、大学生になるまへに、
海外で生活をしてきた者が、ほぼバイリンガルなみの
英語能を身につけるのであります。

「漢字かな混じり」文化に染まつた大学生の年齢
18~19才になつてから、海外留学をしても
大した成果はあげられません。手遅れであります。
最大の原因は、英語圏の大学に籍をおいても、
愛用の辞書が、英和辞典だからであります。
中には、大変な努力をして、一定の能力を身につけて
帰国なさる方がゐらつしやいますが、
日本国内で、英語で communication する生活環境に
身をおくことがなければ、もとのモクアミ。
「英語のいらない」9割りグループの仲間入りとなります。
翻訳や通訳ガイドの仕事につければ、その英語能を
維持できるかもしれませんが、所詮 英文和訳の技能職、
「英語で考える」境地には入れません。

大半の日本人は、
「英語が第二公用語になつてゐる國の
english speaking people が 彼ら自身の mother tongue
から翻訳しながら、しやべつてゐる」
とおもつてゐるやうです。
普通のスピードで英会話するとき、
英語で考えてゐなければ、そもそも
そのスピードについてゆけません。
なのに、
日本人は(日本人だけが)
「日本語の意味がわからなければ、はなせない」と
のたまはれます。
そのことを「あたりまえ、当然だ」と
おもつてゐる者(大半の日本人)は、
そもそも、
「コトバの意味 とはナンであるか」が
わかつてゐないのであります。
英語、日本語にかぎらず、
全世界のコトバが、「意味のやりとり」をするための
道具であることに氣がついてゐないからです。

その重大な原因のひとつに
日本語表記の「漢字かな混じり」文があります。

日本では、
漢字を「表意文字」といひならはし、
カナ文字を「表音文字」と呼んでをります。
言語学者のあひだでは、
漢字は「表語文字」と 正しく呼ばれてゐますが、
ガラパゴス日本では、この名称は一般的ではありません。

この「表意文字」がクセモノでした。
「『表意文字』だから、意味を示してゐる」と
一般の日本人はハヤトチリしてしまふのでせう。
「漢字かな混じり」文においては、
訓読み音読みが、無原則につかはれ、
さらに、判じ物のやうな当て読みもございます。
以前に述べました「五月蝿(うるさい)」
が一例でした。
この「五月蝿」を「うるさい」と読めるのが
教養ある日本人の常識などと おもつてゐる鎖国ドタマ。

ここでもまた、
「コトバにおいて『意味』とはなにか」が、
まつたく理解されてをりません。
それゆへ、
「『漢字で表記される日本語文には意味がある』から
英語文の意味を知るためには、日本語文に翻訳しなければ、
『意味』がわからない」
と、かうなつてしまふのです。

英語文は、英語文の中で意味がおさまつてをります。
「翻訳しなければ、意味がわからない」といつてゐるのは、
英語をダイレクト・メソッドでならはなかつた日本人だけであります。
複数言語国家のインド、フイリピン、パキスタンシンガポール
国民が、英語でしやべるとき、いちいち母語から訳してゐると
おもひなす方が、奇天烈でせうに。

当面、ダイレクト・メソッドを採用しない日本では、
英語難民のガラパゴス状態がつづいてまいります。