あなたのコトバが あなたをだます/日本語道場2020

「漢字假名まじり文」の日本語をkeywordに私たちの社会の深層をさぐります。

E85/英語難民の方々によせる「鎖国頭」の解放要求。でも、ま、ムリか⁉︎

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カルチャー教室で、写実画を教えて、もう20年になります。
この間、10年近く、毎年スペインに受講生の方をスケッチ旅行に引率してきました。
現地では、たどたどしい英語とスペイン語を使いながら、田舎のパラドールを泊まり歩いたものですが、そんな私を見て、
「先生みたいに、英語もスペイン語も不自由なく喋れるようになるにはどんな勉強をしたらいいんですか?」などと尋ねる方が一人や二人ではすみません。
語学のレクチャーをひとクサリ言うのももどかしく、
外国語会話能を修得する方法について説明したパンフレットを、ワープロ打ちして差し上げたこともありました。
でも、ほとんど全員、ワタクシの練習法は採用なさいません。
こういうことを繰り返しておりますと、
私の講師生活の中で、あるぼんやりとした考えが形をなしてきました。

○昔、カルチャー教室の講師になる前に、ベティ・エドワーズなる女性インストラクターの書いた本にいたく感銘を受けました。
今は第4版が出ていますが、
『脳の右側で描け』と言うタイトルの、写実デッサン講習法を縷々述べている本です。
私は、初版と改訂3版の二冊を持っています。

写実の技法と言っても、
対象物と手元の筆の動きを、注意深くよく見る、だけなんですが。
それ以外に、特段のコツや技法があるわけでもなし。
上半身不随の身体障害者が、クチに筆を咥えて、細密で色鮮やかな絵を描いていらっしゃるのを時々拝見しますね。首から下が動かせませんから、そうするしかありません。有名なところでは、星野富弘さんがその代表例でしょう。
こういった、障害者の写実画を見ても分かるように 、
写実画は、技量としての「ウデ」とは何の関係もありません。

ところが、
五体満足で、視力も普通のヒトが、
小マシなピカソみたいな絵を画いてしまう。
それは、
子供のときに、コトバ(母語)を身につけて、そのコトバに結びついた象徴イメージを表現したものなのです。そのイメージは半ば無意識化された記号であり、コトバとアイ待って固定されているのです。

♪ 山はミドリ。家の屋根は台形。
葉っぱは小判形でミドリ。幹は茶色。窓は四角。

コトバによる意思疎通をとりたいときに、話者同士の内言語がどんな図像記号
を意識していようと、何の支障もありません。

でも、全ての人間が、
絵を描き始める子供のときには、
実際に見える形と色を描写できません。
小学校の教室で、子供たちが、パパやママの顔が描けるのは、目、鼻、口、髪の毛などの象徴記号を画いているからです。
対象物が目の前になくても画けるのは、記号の記憶があるからです。
ですから、その顔の絵を見てもだれだか特定することは出来ません。

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『対象物と手元の筆の動きを、注意深くよく見る』というのは、このコトバによる障害を取り除かない限り、不可能です。

そして、
外国語会話を身につけるのも、
この写実画技法と同じような練習が不可欠だと、
最近思うようになってきました。
外国語、ことに英語を問題とするとき、
写実画の場合の
『対象物と手元の筆の動きを、注意深くよく見る』が、
『対象言語(英語)の音声(発音)と自分の発音を、注意深くよく聴く』
と言うふうに、平仄が類似するのです。


五感に基づく言語活動・コトバのイメージ感覚を直接受け入れることで、外国語も習得できます。
聞き取り能・発音感覚・語彙量・作文能・分析力なども、母語(日本語)を媒介せずに、直に感覚すればいいのです。
なのに、おおかたの日本人・英語教育者は、日本語で説明した英文法と英和辞典とを使って翻訳するのが、英語理解の唯一の方法だと言います。もう、ほとんどカルト宗教みたいなマインド・コントロール状況です。
それで、いまだに日本人の英語力は世界で下から2番目なんですね。(最下位は北朝鮮です)

日本社会で TOEIC や 英検が必要とされなくなったとき、日本人が英語を使えるようになるでしょう。